まったくモテない41歳独身底辺男が流されるがままに適当に生きながらもがき足掻く日記
勢いに乗っていた。

前回のゲットとストナンでメアドゲット直前までいったというこのたった二つの経験だけがその原動力であった。


その勢いがまだ続いているある日、あるスタンドの受付カウンターでS級といっても過言ではない20歳前後のかなりカワイイ子がいた。

今までの俺なら考えられないが、勢いに乗っていたのとナンパ師モードだったこともあり、なんの躊躇もせずその子を誘ってみることにした。

したたかにも自分のメアドと番号を書いた紙切れは用意してある。

荷卸しが終わり、サインを貰いに行くと運よくその子がまだカウンターに入っており(どのスタンドでもそうだが、いざ声掛けしようと勇んでサインを貰いに行くと、トイレやら休憩やら車検・洗車の手続きやらで別の作業スタッフと入れ替わってることも多い)、俺はサイン中にフリートークに持ち込むことを決心した。

しかし受付専門にスタッフを置いているようなスタンドというのはそれなりに広くて小奇麗であり、車検やら高価な洗車やらその他様々な施工をしているところがほとんどで、レジ業務以外でもそれら施工待ちの客の管理などの仕事で受付といえどもそう暇ではない。
また給油を終えた客がその支払いに引っ切り無しに入ってくる。

その合間を縫いかつ簡潔にフリートークを展開し、迅速に連絡先を交換しなくてはならない。
せっかくフリートークに持ち込みいい感じになったとしても、それらの客の対応や突然の電話、他のスタッフからの連絡など邪魔が多過ぎるからだ。
難易度としては前回の比ではない。
また、ブーメランの準備が必須のシチュエーションともいえる。

俺は荷卸しが終わっていつでもサインを貰いにいける状態にあったが、したたかにも客が途切れ彼女の手が空く状況を伺った。

やがて数少ないその状態が来た。足早に受付に向かう。

ストナンで言えば適当な相手を見つけ、一勇気振り絞ってその対象に目掛けて大きな一歩を振り出した場面であり、この一歩が出さえすればもう勇気というものはさほど必要はなく、あれほど恥じらいを感じていた周囲の目もただの風景と化し、あとはその勢いに身を任せておけばたいがい声掛けのところまでは行けるのだが、しかしスタンドナンパではこのシチュエーション、この時間帯というのは細心の注意を払わなくてはならない。

なぜならば、その数少ない適当と思われる状態を見つけ、そのままストナンの時のように周りを注意せず突き進んでしまうと思わぬ敵に肩透かしを食わされるハメになる。

「あ、サインですか?いいッスよ」

などと、いきなり横から声が掛かり、頼んでもないのに他の店員(たいがい男)にサインされてしまうのだ。
まさか断わるわけにもいかないし、サインしてもらったらカウンターに行く理由もなく、いきなり試合終了となってしまう。
実は過去に何回かこういうようなことがあった。

客が少ない“その数少ない適当と思われる状態”の時は、逆に言うと店員が暇な時でもあり、そんな店員が手持ち無沙汰で入り口の前でフラフラしていることも多く、受付嬢の手が空いているのを伺いつつ野郎店員をかわして無事カウンターに辿り着くというのがけっこうな難儀だったりする。

たかだか取引先の女にちょっと声を掛けるというだけのことがなぜこんなにも険しく茨の道なのだろう・・・
他の職種、たとえば営業マンとかであれば、そのようなチャンスは月並みに転がっているだろう。

だからといっていつまでも待っているわけにはいかず、“その数少ない適当と思われる状態”になったら突っ込むほかない。
カウンターに行くまでにボス(マネージャー)に遭遇してしまうと、責任者からくる義務感なのかかなりの高確率でサインされてしまうので、ボスの遭遇だけは避けねばなるまい。

いよいよ行くことを決意し、一歩足が出てからはもう小走りで脇目も振らず(店員と目が合ってしまうと非常に危険)突進し、なんとか無事入り口の自動ドアを開いて中に入ることができた。

中に入ると施工待ちだかの中年の夫婦が座っていたがそんなことはもうどうでも良かった。
そそくさと近づきながらもおもむろに「サインをお願いします」と言いサインをいただく。

ここでも注意点がある。
受領書等に数箇所サインをしてもらうことになっているが、たいがいはボールペンで自分の名前を筆記してくれる。
しかしバイトなのにちゃっかり自分のハンコを用意していて、ポンポン押されてあっという間にこのやり取りが終わってしまうこともある。

通常ならば早いに越したことはないのでこちらとしてもその方が助かる。しかし声掛けとなると話は別。
なぜならば、受領書等に自分の名前を書いてもらっている時間を利用して、この間(ま)がなんとなく手持ち無沙汰だから私は話掛けられているんだ、というシチュエーションを作り出すことができ、より自然にトークが出来るし、またお互い直接目を合わせないでしゃべれるというメリットがある。
俺なんか対面恐怖症、あがり症みたいなところがあるから、これは非常に助かる。

これがハンコだとあっという間にポンポンと押されてしまい、「お疲れ様でした」と言われてしまったらそこで試合終了。
そこから「あ、あのさ~、」などとフリートークを展開するのも不自然だし、またこのスタンドにもいつか配送にくるわけだしあまりあからさまなナンパはできない。

とはいえハンコ派はかなり少数派なのでそれほど危惧していなかったのだが、引き攣った半笑いで「サインをお願いします」と言った後彼女の右手を見るとそこにはシャチハタが握られていた。

こいつはまずい、一瞬だ、ものの1秒で決着がついてしまう。
少子化の影響か、スタンドのバイトで女の子と遭遇する機会も減っている中、さらにそれがS級ともなるとそれは年に2,3回遭遇できるかどうかくらいの希少な機会であり、せっかくここまで難を掻い潜ってきたのにものの1秒でそれらが台無しになってしまう。

ここは俺とて多少無理をしてでもなんとかコンタクトを取りたい相手であった。

お願いします、と言い受領書等が貼られたバインダーをカウンターに差し出す。
案の定、彼女は慣れた手つきで手早くポンポン押し始めた。


「あ、あれなの?このへんに住んでるの?」


最後のハンコを押すか押し終えるかというタイミングで強制割り込みしてやった。
そこには気の利いた間も糞もあったものではなく、とても自然なやり取りとは言えなかったが、しかし与えられたチャンスが1秒しかないのではそうするほかになかった。

でもそれを聞いた彼女は意外にも笑顔で

「あ、そうです、〇〇の方に住んでいます」

と答えてくれた。
しかし幾度かストナンで声掛けしているのにも関わらず自分で声を掛けておきながらこういうシチュエーションで女と対話するのが一向に慣れず、ここでも俺はまたテンパり、〇〇がどこかもわからないくせにとりあえず「ああそうなんだ」と乾いた相槌を打ち、そしてなにげに窓ガラス越しに外に目をやると、給油を終えてレシートを持った客が精算をしにこちらに向かってくるのが見えた。

せっかくこれからだというのに、もう話をまとめなければならなかった。
じっくり会話を吟味し少なからずこれまで培ってきたナンパ話術の知識と経験の小さなプールを検索するわずかな時間すら与えられなかった。

「あ、俺も案外ここから近いところに住んでてさ、もし良かったら今度食事でもしない?」

かなり強引だった。だが俺の貧弱なCPUと小さく浅いキャシュメモリからはこれくらいしか出てこない。
彼女は若干頬を赤らめた感じになり、「え?あぁ、ありがとうございます・・・」と言ったがそれ以上のリアクションはなかった。

もう振り向かなくとも客がすぐそこまで迫ってきていたのは重々承知していたので、ここで悠長にメアド交換をしてる暇などない。

ここで必殺のブーメランを取り出す。「じゃ、もしよかったらこれ」と言いブーメランを差し伸べるが、彼女からは手を差し伸べてくれない。

「ン゛ーーーーー・・・」

という自動ドアが開く音が聞こえた。

「もしよかったら!」と念を押すような感じで言った後ブーメランをカウンターの前に投げるように置いて入ってきた客と入れ替わるように退店した。


その後彼女から連絡が来ることはなかった。
まあ当然と言えば当然だろうが。ほぼ面識がないどころかやり取りが1分足らずくらいだったのだからな。

だがもうこのスタンドに行くのがやはり気まずくなってしまい、2ヵ月後くらいにまた配送で付いてしまったのだが、彼女いないで欲しいなあ・・・と祈ったがでもこういう時に限ってまた出会うのだ。

彼女俺のこと忘れてるかな、と思ったが、ハンコをもらい(なんかこの時はしゃべろうという気が起きなかった)必要最低限の挨拶以外はなにもしゃべらず退店し、ちょっと歩いて振り向いてガラス越しに彼女を見たら向こうもこっちを見ていたので、おそらく覚えているらしかった。

それからそんなに間が空かずにまたこのスタンドの配送が付いた。
到着して最初納品書を渡しに行ったときは別の女がカウンターにいて、彼女休みか辞めたのかなと思い、ホッとしていたら受領書をもらいにカウンターに行ったら彼女がいた。

表情が「あのときはどうも」的な笑みだったのでああやっぱ覚えてるんだろうなあと思い、しかしもうあんな愚行に及んでいる以上白々しくしてるのも大人げないので、ちょっと世間話をしてみようと思った。
そこから話が繋がればまた望みも出てくるというもの。

俺「あれ、大学生?」

彼女「え、・・・あの私フリーターです・・・」

ちょっと意外だった。近辺に大学があるところだったからてっきり大学生だと思っていたので、夏休みどっか行くの?とかそういうことを聞こうと思っていたのに思惑が外れ、何を聞こうかテンパった。
俺ってやつはまったくもって融通が利かない。

俺「え、あ、そうなんだ。でも大学生っていいよね、休み長くてね・・・」

などとなんか見当はずれで先の続かない返答をしてしまい、彼女も返答に窮しているのかなんか不自然な曖昧な返答をしてきて俺も居た堪れなくなって「じゃ、ありがとうございました(汗)」と言ってそそくさとそのまま退店してしまった。

その後彼女には会えていない。


スタンドナンパもなかなか難しい。しょっちゅう同じスタンドに行っていればおのずとその機会も増えるが、下手したら数ヶ月いかないスタンドも少なくない。
機会が少ない上にせっかくチャンスが訪れてもその許される時間というのが限られた短い時間なので、どうしても制限が厳しくなってしまう。

でも俺みたいな非モテオッサンは仕事上の付き合いでのナンパというのがやはり一番やり易いことは確かだ。己の正体が割れてるから変に怪しまれないし、己が何者かというのを(たとえハッタリだとしても)一から説明する必要もなければいちいち仕事の説明をする必要もないからだ。

まあこのS級の女はまた機会が巡ってきたら声掛けを継続していきたいと思う。
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【2012/09/14 13:49】 | ナンパ
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