まったくモテない41歳独身底辺男が流されるがままに適当に生きながらもがき足掻く日記
とりあえずその木の根階段を行けるところまで行ってみようと思った。それでいよいよもう無理そうなら素直に引き返して今日の登山も終わりにして帰宅しようと思った。

相変わらず木の根階段の傾斜はキツく、しかもだんだん木の根階段ですらなくなり、もはや両手で木々をつかみながらふぅふぅ登っていくと、突如人工的な丸太階段が出現した。木の根階段地帯に入ってからこれまで、この先危険の立て看板以外は人工的なものはなく、これまでの木の根階段も、無理やりこれは階段なのだ、超自然的に見えるが、ここいらの山の管理人だかによって利用できるものは利用し、計算し尽くされてこのような階段になっているのだ、むしろこういう演出なのだと、ごまかしごまかし自分に言い聞かせてこなければ、およそ人工物というものは見当たらなかった。
そしてそれはまるでRPGのダンジョンで、どうにもここから先どうやって先に進めばいいのかわからん、と同じフロアをもはや瀕死状態になりながらウロウロしている時に突如隠し階段が表れたような感覚を覚えた。


IMG_1401.JPG

(助かった!人口階段があるということはここを登ればなんとかなる)
ここが登山ルートであるかどうかというのはまだわからないが、とりあえず遭難という危険性は大きく退いた。
そしてこれまでの不安と恐怖が入り混じる暗雲が垂れこめた気持ちが一気に薄らいでいき、足取りも軽くなった。
その軽くなった足取りでどんどん進んでいくと、やがて拓けた場所に出た。そして三角屋根の山小屋らしきものが見えてきた。どうやら三ノ塔と言われる場所に到達したみたいだ。
でも、事前情報では三ノ塔の前に二ノ塔というものがあったと思ったが、どうやらそれをすっ飛ばしてきてしまったらしい。というか、この三ノ塔の広場に入る直前に枝分かれした山道があったので、本来ならそちらから昇ってくるはずだったのかもしれない。そしてそちらのルートにおそらく二ノ塔があったと思われる。

しかしまあとにかくガスっていて真っ白でせっかく苦労して登ってきたのになにも見えやしない。それに平日とはいえ人気の登山ルートでありながら山小屋やベンチがある休憩ポイントだというのに誰一人もいないってどういうことなのだろうか?本当にここが三ノ塔なのかちょっと疑わしくなってきた。




しかし間もなくして後方から一人の50代らしき男がくたびれた表情でこちらに向かってきた。
今回の登山では下の石碑で出会った40代くらいのひょろっとした男以来の2人目の登山者との接触である(登山開始から3時間は経っている)。

俺はしばらく人と会っていなかったため面食らい、向こうもだいぶ疲れている様子でお互いしばし顔を見合わせていたが、
「・・・こんにちは」
と息も絶え絶えに言ってきたので俺も「こんにちは・・・」と返したのであった。

しかし彼の出現により、この場所はやはり三ノ塔であり、このルートは山頂である塔の岳に通ずるルートであることはほぼ確定的となった。
そして彼の出現以降、わらわらと登山者が湧いてきて、俺を含め三ノ塔で瞬間的には10人くらいが居合わせるかたちとなった。
みな一様に疲れた表情をしていた。どうやら本ルートもそれなりに過酷だったと思われる。
女もいわゆる山ガール的な、若い子も2,3人いた。みな男(おそらく彼氏)連れだが。恰好からして登山初心者ではない感じ。若いとはいえさすがに息を切らしていたが、なんかさわやかなんだよな。ちょっと休憩したらすぐ出発していった。

で、俺は独りで過酷な(無駄な)サヴァイバルをしてきたこともあってかなり疲労しており、しばらく三ノ塔のベンチで休んでいたが、まあ登ってくる人登ってくる人、みな一様にいっぱしの登山者である。なんかもう誰が見てもいっぱしの登山者風情。俺だけだ、全身ららぽーとで揃えましたみたいなカジュアルな恰好をしてるのは。
しかし今考えるとかなり舐め腐った格好をしていた。帽子も被っていなければストックも持っていないし、服装は見るからにカジュアルで山仕様要素はどこにもなく、ザック(最近はリュックとは言わないらしい)も高校生が通学に背負っているものよりも一回り小さいものを背負っており、かろうじて靴だけはトレイルランニングシューズを履いていたが、ほとんどの人がそれ以上の、誰が見ても登山靴とわかるものを履いていた。

とはいえ、無謀浅はかなオッサンとは思われたくないので、すでに疲労困憊汗だくだったにも関わらず、この程度の山なんてこんなカジュアルな服装で十分みたいな、涼しい顔をして足を組んだりしてベンチに座って余裕をかましている達者な登山者風情を演出していたつもりではあったが、それはそこにいた誰もが、無謀浅はかで滑稽なオッサンだということが一目で知れたことだろう。

しかしまあ、もうここが頂上でいいんじゃね感が俺の中に充足していた。自分の車を置いた駐車場から歩いてきてゆうに3時間以上は経過していたように思う。事前情報によれば、この三ノ塔というのは塔の岳山頂までの中間地点くらいらしい。つまりここから今までと同じくらいの時間と労力が掛かるということだ。とてもじゃないが、俺の全バイタリティから換算してその余力でこれまでと同じくらいの行程を登っていけるとは思えない。しかも塔の岳山頂まで行けたとしても、ロープウェイなどないからまたピストンしてこなくてはならない。今ここから引き返したって体力的にけっこうギリギリなんじゃないかと思えるほどだ。この三ノ塔からは天気が良ければ遥か遠くに塔の岳山頂が見えるらしい。もしそれが見えていたらその距離におののいて、俺はおそらく引き返していたに違いない。

結局三ノ塔には30分くらいいただろうか、ベンチに座ってだらーんとしていたら思いのほか体力がリカバリーしてきた。
周囲で同じように休憩していた登山者たちが次々に次のステージに旅立ってゆく。さっきまで息を切らしていた山ガール(彼氏付き)も60代くらいの爺さんも、誰もここで引き返す者はいない。
ちなみに次のステージというのは、三ノ塔から塔ノ岳までの、三ノ塔~鳥尾山~行者岳~新大日~塔ノ岳の行程であり、その行程には、岩場や鎖場が断続し、崩壊が進んだ痩せ尾根を歩くなど、この表尾根ルートと呼ばれるルートのハイライトになる行程である。
今までろくに登山などしたことのない俺も、鎖場とはなんぞや、尾根や稜線とはなんぞやという少なからずの興味があったわけであり、それらを目前にして、それらを一目すら見ずにして引き返すというのもどこか後ろ髪を引かれる思いであり、また、疲れ切った顔をした全身ららぽーと男が、みなが次々に次のステージに旅立ってゆくのを横目に逆流して下山していくというのもなにか悔しい。
疲れていることには変わりがないが、案外体力が回復してきたというのもあり、他の登山者の流れもあいまって、俺の足は自然ともと来た道ではなく、次のステージの方に向いていた。
そして三ノ塔の小屋を背にし、真っ白い深い霧の中へと消えていった。


IMG_1407.jpg




(つづく)



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【2017/10/04 17:46】 | 登山
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動画拝見しましたが、思っていたよりも道が険しいのと、ガスで真っ白なのでびっくりしました(笑)
写真もいいですが、動画だとより雰囲気が分かっていいですね!

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この記事へのコメント
動画拝見しましたが、思っていたよりも道が険しいのと、ガスで真っ白なのでびっくりしました(笑)
写真もいいですが、動画だとより雰囲気が分かっていいですね!
2017/10/08(Sun) 00:05 | URL  | ファン #-[ 編集]
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